今日は、ある生徒とのやりとりから感じた「学習の本質」についてお話ししたいと思います。
先日、自習室で模試を控えた生徒が過去問に取り組んでいました。
表情は真剣そのもの。過去の模試を一生懸命解いている姿に、思わず「頑張ってるね」と声をかけたくなりました。
けれど、ふと気になって、こんなふうに尋ねてみました。
「なんでその問題を今やってるの?」
すると彼女はこう答えました。
「模試で良い点を取りたいからです。」
その答え自体は、間違っていません。
目標に向かって努力しているのですから、むしろ立派な姿勢です。
でも、私は少し胸がざわつきました。
なぜなら、彼女の基礎学力は正直まだ十分とは言えず、問題文を読むのにも一苦労している状態だったからです。
計算のルールも曖昧、語彙も不安定。過去問の点数を伸ばす以前に、まずは基礎を固めることが急務なのは明らかでした。
この状況をたとえるなら、
**“武器(=基礎)を持たずに戦場(=模試)に出ようとしている”**ようなものです。
過去問を解くこと自体が無意味だというわけではありません。
むしろ、模試対策として重要な位置づけです。
ですが、それは「土台ができている人」にとっての話。
もし土台がぐらぐらのまま高い建物を建てようとしても、途中で崩れてしまうのは目に見えています。
それでも、多くの子どもたちは「とりあえずやってみる」「今やってることが正しいかはあまり気にしない」――そんな姿勢で取り組みがちです。
努力しているのに成果が出ない。
焦って空回りする。
やがて「自分はダメなんだ」と思い込んでしまう、、、。
だからこそ私は「今やっているその勉強は、目的達成のために本当に必要なことなのか?」と、彼女に問いかけました。
「今は模試で点を取るために問題を解いているかもしれないけど、本当に必要なのは“戦う力”をまず身につけること。つまり、基礎の力をつけることじゃないかな?」
すると、素直にこう言ってくれました。
「たしかにそうかもしれません。」
そして、その日のうちに基礎の参考書を開き、静かに取り組み始めました。
私はその姿に、深く心を打たれました。
間違いを責められたのではなく、「必要なことに気づけた」その表情は、なんだか晴れやかに見えたのです。
この出来事を通して改めて思ったのは、
勉強において何より大切なのは、**「目的から逆算する視点」と「素直に軌道修正できる力」**なのだということです。
目の前の課題をこなすことも大事ですが、それが本当に今の自分に必要な取り組みなのか。
子供達には、そんな「一歩引いて考える目」を育ててほしいと思います。
そしてそれは、決して本人だけで身につけられるものではありません。
周囲の大人――私たち講師や、日々見守ってくださっている保護者の皆さまの声かけ一つが、大きな気づきにつながるのです。
この夏、お子さまの学習が“作業”になっていないか。
“目的に合った正しい努力”になっているか。
少し立ち止まって、一緒に振り返る時間をとってみてください。
また、アンドワンではこうした本質的な学びの大切さを「本当に経験してきた人」からしか伝えられないと考えています。
たとえば、子どもが「プロ野球選手になりたい」と思った時、やはり目標とすべきはイチロー選手のような一流選手ですよね。フォーム、練習方法、考え方――その全てを“すでに成功した人”から学ぶのが夢への一番の近道です。誰から教わるか、はとても大事なことです。
受験もまったく同じです。
「どの参考書か」よりも、「誰に学ぶか」。
だからこそ、当塾の講師は全員受験の苦しさとその先にある喜びを実際に体験し、乗り越えてきた人材のみを採用しています。
「世の中、学歴が全てだとは思っていません。」
社会に出れば、必要とされる力はもっと多様で、柔軟で、人間的なものです。
けれど、塾という場所は“今この瞬間、学力という土俵で戦っている子どもたち”のための場所です。
ここで「努力の仕方」や「目標への向き合い方」をしっかりと身につけた子は、
この先、学歴では測れない力をもって、どんな未来でも堂々と生きていける――
私はそう信じています!
この夏、お子さまにとって“意味のある学び”を。